恥ずかしい控訴審判決
1 控訴審判決では、伊藤さんを勝たせたいというバイアスがかかっていることを隠すことなく披露していることが判明した。
2 時間の食い違いに関する控訴審判決の判断
(1)伊藤さんの主張の日付、時間の食い違い
①膝の痛みを感じた日付、時間
著書(4月4日午前5時すぎ)と、友人陳述書(5日昼)及び本人陳述書の時間が異なっている。
(なお、本人尋問時でも初めて膝の痛みを感じたのは5日の昼頃と答えたが無視されている)
②性被害の日付
著書、裁判では4日午前5時頃、新百合ヶ丘総合病院では4月3日と主張。
(まつしま病院では4月3日~4日にかけてと主張これも無視されている)
(2)これらの食い違いについて控訴審判決の評価
①膝については「本件著書を執筆した当時の記憶と本件行為当時の認識とが、時間的経過等に伴い、若干相違することはあり得る。」
②性被害の日付については「4月3日と誤った申告をしていたことはうかがわれるものの、その他はほぼ一貫して同月4日午前5時頃の性被害と訴えたものと推認するのが相当である。」
食い違いについて問題にしていないことがわかる。
(3)山口さんの主張の中の時間の食い違い
「控訴人(筆者注山口氏)は、本件行為が行われた時間について、同日午前2時過ぎ頃からである旨述べるところ、原審の答弁書(15頁)では、同日午前2時又は3時と主張しており、食い違いがみられる。
「1時間」の相違あるいは「又は」について「食い違い」とマイナス方向で評価している。
伊藤さんは膝の痛み、性被害にあった日(なお、起きてからの記憶は明瞭であることは再三発言)の「日付」という大きな食い違いについて不問とする一方、山口さんの主張は(性行為の時間を正確に覚えているほうがむしろ不自然ともいえる)「1時間」「又は」という伊藤さんに比べて遥かに小さな差異を問題とした。
3 アルコールに関する証拠の取り扱い
(1)原審と異なり、控訴審ではアルコールに関して、意見書を使い、客観的に評価しようとする姿勢をみせた。
しかし、残念ながらまたしてもバイアスのかかった判断をしてしまった。
(2)山口さんの午前2時頃の性行為とアルコール酩酊に関して
①上記主張について判決では「その時点(午前5時頃:筆者注)でもアルコール性健忘が生ずる可能性が指摘されているのである」としている。
②山口さん側が午前2時の意識が清明であったことに関する手塚意見書については「飲酒による症状は個人差があるため、断言はできないとういうものであるから、これをもって上記の素朴な疑問が解消されるというものではない」(赤字、下線筆者)と書かれている。
伊藤さんの主張の正当性は「可能性」で認める一方で、山口さん側の主張は「断言」できなければ認めない。同じアルコール酩酊に関する事で「個人差が大きい」ことも判決文に記載があるにもかかわらず、その認定方法に大きなバイアスがあることがわかった。
4 以上からわかるとおり、控訴審裁判官は伊藤さんよりの判断基準に基づいて判断していることを惜しげもなく披露し、しかもそのことを隠そうともしていない。
まさに恥ずかしい控訴審判決と言えるだろう。
5 午前2時頃の性行為について午前5時頃のアルコール性健忘の可能性を使う不思議
控訴審判決は論理破綻へ
山口さん側の主張、すなわち午前2時頃の合意による性行為を否定するために、控訴審判決では「わざわざ」午前5時頃のアルコール性健忘を持ち出してきた。
この唐突な意味不明とも思える記載が、控訴審判決の論理破綻を引き起こしてしまうことが判明した。次章で検討する。