第3準備書面を読んで 3 伊藤弁護団による山口さんへの名誉棄損か

1.デートレイプドラッグに関する主張、事実摘示の内容はどのようなものか。

 

判決文によると

「同記述を一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば、原告に生じた記憶障害や吐き気の症状がデートレイプドラッグを服用した際に生じる症状と一致していた事実を適示するものと認めるのが相当であり、被告が原告に対しデートレイプドラッグを服用させた事実を適示するものであるとは認められない」

 

しかし、控訴審での被控訴人(伊藤さん)の主張は症状の摘示ではなく、「デートレイプドラッグを入れられた疑いを適示した」という主張をしているようである。

 

そして、疑いの摘示の真実相当性に藤宮意見書や清水意見書が主張されている。

 

今回特に問題とするのは上記主張ではなく、以下の主張についてである。

 

2.デートレイプドラッグの使用が事実として摘示されていた場合

 

準備書面を引用する

 

『(イ)また仮に、公表行為(1)⑤において、デートレイプドラッグの使用が事実として摘示されていたとしても、

(中略)

デートレイプドラッグが使用された事実には真実ないし、真実相当性があるといえる。

(ウ)この点、控訴人は1)被控訴人が意識を失ったのは飲酒が原因である可能性が高いこと、2)控訴人と被控訴人の会食した串焼き店及び寿司店ではカウンターテーブルに2人並んで会食しており、第三者に気付かれずに秘かにデートレイプドラッグを混入させるのは至難の業であると主張する。

 しかし、藤宮鑑定では、防犯カメラの映像から読み取れる被控訴人の状況が飲酒だけでなくデートレイプドラッグの併用でも生じる可能性が否定できないとの見解が得られている(甲23の1・25頁)し、清水教授の見解でもデートレイプドラッグとアルコールを併用した場合、仮に、アルコールが少量であったとしても被害者に被害時の記憶を欠落させるほか、一過性前向健忘を引き起こす作用があるとの見解を得ており(甲24の1・4ページ以下)、飲酒に加えてデートレイプドラッグによって被控訴人の症状が引き起こされたことが裏付けられる』(アンダーライン、赤字筆者)

 

 

 問題は、仮に(疑いではなく)事実摘示として、デートレイプドラッグ使用を真実とし、さらに意見書を根拠に「裏付けられる」と断定している点である。

 意見書引用部分を読むとまず、藤宮意見書は「可能性が否定できない」と裏付けとはとても呼べない表現である。

また、清水教授見解は「アルコールが少量であったとしても」と伊藤さんのケースとは異なる前提での意見書である疑いすらある。

 

そもそも伊藤さんの飲酒量は少量ではない。しかも伊藤さんの主張によると寿司店途中から記憶がなく、準備書面で自ら認めているように正確な飲酒量は不明であり、立証することができない。

 

そして、相当(多量)の飲酒はデートレイプドラッグ使用を否定する重大な事実、証拠となる。デートレイプドラッグ使用事件のほとんどは少量のアルコール+ドラッグで引き起こされている。なぜかというと、アルコールとドラッグの併用の場合、相互効果がどの程度か予測することはできない。とすると相当程度酔っている上にさらにドラッグを使用した場合は効きすぎる危険が増大する。効きすぎた場合、一人でホテル等に連れて行くことは不可能となり、命の危険も生じてしまうからである。

 

さらに、伊藤さんの体調悪化がアルコールとデートレイプドラッグの併用で起こったことの因果関係を証明するためには、アルコールのみでは伊藤さんの体調変化が起こらなかったことの証明が必要である。著書、陳述書、準備書面ではアルコールのみでも生じる症状しか認められず、そのような証明を試みた様子もない。

 

4.伊藤弁護団による山口さんへの名誉棄損

 

3で述べたように、山口さんがドラッグを使用したという根拠は見当たらず、せいぜい「可能性が否定できない」レベルのものがあるにすぎない。

 また、前節でも検討したとおり、山口さんがドラッグを混入していない、あるいは混入できない状況であったとする証拠が多数ある。

にもかかわらず準備書面において、デートレイプドラッグ使用は真実、「飲酒に加えてデートレイプドラッグによって被控訴人の症状が引き起こされたことが裏付けられる。」という断定した表現をすることは、山口さんがドラッグ混入していない(できない)ことを知って敢えて記載した、名誉棄損にあたるのではないだろうか。

 

準備書面が名誉棄損になるかどうかは以下のサイトに詳しく記載されている

 

www.mc-law.jp

 

上記サイトによれば

「断言で口撃(断言的記載)「準備書面などでの過激表現」等の場合に責任が認められるケースがあるようだ。

 

デートレイプドラッグの使用は不同意性交とは次元の異なる話で、2度の司法的な判断で不起訴となった山口さん(しかもその判断の中でデートレイプドラッグは一切主張されていない)の名誉を著しく棄損するものである。

控訴審も進行した段階でこのような主張をあえてすることは、もはや依頼人の弁護を超えて単なる山口さんへの攻撃に該当するのではないだろうか。