伊藤詩織さんの飲酒量に関する意見書について 3
1.意見書は平均的日本人をもとに机上の論理の上に成り立ったものにすぎない
飲酒量と酩酊度の関係は個人差が大きく、一つの基準で語られることの危険性、無意味さを示した。
藤宮教授の意見書は個人差を無視し(飲酒後のアルコール代謝については3つの仮説をおっしゃっているようだが)平均的日本人を想定して、その基準に当てはまらない主張を切り捨ててしまっている。実際の飲酒による酩酊度を無視した机上の論理に基づくものと言わざるを得ない。
もし、本当に酩酊度を推定したいのならば、実際に問診し、遺伝子検査を行い、酒の強弱に合わせた基準により推定すべきではないだろうか。
現実に起きた可能性があることを簡単に否定できる基準、数字を根拠に「なかったこと」にしてはならないのである。
さらに専門家による飲酒量と酩酊度に関連すると思わせる論文があったので紹介する。
2.エタノール血中濃度と臨床症状に関する検討
(日臨救急医会誌2018;21:498-503)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/21/3/21_498/_pdf/-char/ja
この論文を読む時に注意すべきなのは、このデータはアルコール中毒で搬送された患者のみのものではなく、救急外来を受診した全患者から「飲酒後」と診療録に記載があり、エタノール血中濃度が測定されていた1265名を対象としたものという点である。
エタノール血中濃度の平均値が219mgと低値なのは上記が理由であると推測される。
(1)私の主張と関連する部分を簡単に説明する
①一般的にエタノール血中濃度と酩酊度、臨床症状は相関していると示されている。しかし、その根拠となった引用文献の記載はわれわれが検索したなかでは特定できなかった。(p502)
②エタノール血中濃度と臨床症状予測に有用な11項目(ASC)について相関があるという調査とない調査がある。
③この論文では虎の門病院に救急搬送された中でエタノール血中濃度と臨床症状の11項目のうちの1つである意識レベルとの相関関係を調べたものであり、
結論は臨床症状からエタノール血中濃度の推定は難しいとのことである。
※血中濃度と意識レベルの相関係数は0.50であり相関はある。しかし、この程度の相関係数で推測することは不適切である。(決定係数0.25のため)
(2)そして、特に私が注目したのは意識レベルと飲酒量とのバラツキに関する箱ひげ図である。

意識レベル0の部分に注目してみると最大値はエタノール血中濃度410mgを超えているものがある。前述のアルコール判定表に従えば昏睡状態のはずである。
しかし、実際には意識レベル0=意識清明(意識がはっきりある状態)であったようだ。
上記箱ひげ図からわかることは血中濃度と意識レベルは相関関係はあるが、最大値と最小値の幅が大きく、さらに外れ値がかなりありデータを検証することが難しくなっているものと解される。
結論どおり臨床症状からエタノール血中濃度を推測することが難しいのと同様、エタノール血中濃度から臨床症状(意識レベル)を推測することも難しいように思われる。
先ほどの酩酊度の表には泥酔期「意識がはっきりしない」昏睡期「ゆり動かしてもおきない」という意識レベルに関する記載があるが、血中濃度だけから推測することは困難であるとこの論文からも推測できるのではないだろうか。
この論文も藤宮教授の意見書を否定する根拠になりうるものであると考える。