伊藤詩織さんと検事4 強姦致傷場面の申告が無い 酩酊者の言い訳とは

 1 1回目検事取り調べ 著書の激しい暴行がない

 

 (1)1回目検事取り調べでは最初に検事が事件の概要について、時系列に沿って伊藤さんに質問をしている。

 そして、伊藤さんの事件に関する証言には、驚くべきことに、意識回復後の行為や状況について、著書や裁判と重要項目において異なる主張をしていることが判明した。

 (2)取り調べ時では語られなかった事

①PCの話。(盗撮の可能性についての主張が全くない)

②洗面所の鏡で乳首から血が滲んでいた話。

③窒息しそうになって殺されると思ったという話。

④膝をこじ開けようとしたなど膝関連の話。

(なおその後、強姦致傷の話になって初めて膝の話をし始めるが、どのような場面で膝を痛めたかは話しておらず、検事も特に膝について言及することはなかった)

⑤パンツお土産などの変態行為。

 

 要約すると、盗撮事実、目覚めた後の激しい暴行行為、傷害の事実が語られていない。

 

(3)逆に著書や裁判の中ではなかった事

目覚める少し前から重みや下半身の痛みの「残像」があったこと。

 

検事取り調べ時の伊藤さんは「起きた時からものすごくしっかりと記憶がある」と証言している。

にもかかわらず、BBで主張している盗撮や強姦致傷等の事実を主張しなかったのはなぜだろうか。前章で明らかにしたように、午前5時からの供述の信用性にこの点からも疑問が生じる。

 

 2 目を覚ましてからの伊藤さんの主張と準強姦罪の関係性

 (1)1回目検事取り調べから引用する

伊藤 その、起きてから押し倒された部分も全く、意識が戻ってからの話も全く、あのー、そこの部分は準強姦に入るんでしょうか。

検事 いや、そこも入ると思います。要するに、なんでかっていうとね、これ、もっと相手の犯意の、今度故意の問題になってくる。例えば、その主張で、その、仮に伊藤さんがだよ、応じてました、なんか、いいっていうね、回答をしました。多分、そういう主張になるんだと思うね、相手は。で、そうなったときに明らかに、その、伊藤さんが拒絶して、もう強い態度出た以降はやってないっていう設定に多分、なる。それまでは、こう、行ったのかもしんないけど、いや、そういう、まあ、気があるんだと思って勘違いしてました。で、もう強く拒絶されたんで、あ、これ、本気なんだなと思って、それ以降からはもうやめましたと。

 

 伊藤さんが午前5時頃の目覚めてからの話が、窒息、膝をこじ開けた等の話しがない以上、検事が準強姦にあたらないと話したのは当然だろう。

 

 (2)ここで、注意しないといけないのは、5時前に「合意」があったことを前提に検事が話していることである。

これは、山口さんの供述や、午前2時の性行為を示すカルテの存在が理由であろう。

加えて、この話の前に酩酊者の話しを検事が説明している。

 

 3 アルコール酩酊者の供述の信用性

 (1)酔っ払いがよくする言い訳の信憑性

 検事取り調べにおいて、起きてからの行為が準強姦に当たるかの話の前に、アルコール酩酊者について、検事が話をしている。その中に興味深い内容があったので引用する。

 

検事 (一部略)

 お酒のまずいっていうかね、こう、われわれが、まあ、よく知っているお酒の例でまずいのが、あのー、よくね、被疑者の人で、お酒を飲んでたからね、記憶にありませんっていう人って結構、出てきちゃう。で、それ、裁判官、よく見てるんですよ。その人たちは有罪になるの、全部、こう。で、なんでかっていうと、大体、専門家の人たちの話だと、あのー、ここのやっているときはね、記憶があったのに、起きてね、記憶がなくなるということもあるんだっていうのを、結構、法廷で述べるんだよね。述べてくれるの。そうそれは恐らく、今はそこまでもう立証しなくても、裁判官の頭と法律家の頭って、そういうね、頭んなっちゃってて。

 そうすると、この案件がこれじゃないかっていうことを、弁護側が主張する可能性が出てくる。意味分かる?なんか、この間、その、室内ではね、記憶があったのに、例えば、酔っぱらってね、対応しただけで、その後、記憶がね、なくなってるんじゃないか。で、ところが、それを主張されたときに検察側がつぶせるかってことになってくるの。で、そこが検察を今、つぶせるだけのね、証拠がね、どれもないっていう状態になってる。証拠上ね。これは、あくまで。

(以下略)

 

 (2)つまり、酔っ払いは「覚えていない」という言い訳をする人が結構いて、その言い訳は通らない(本当は知っている)ということである。

 これは、周りにお酒をよく飲む人がいる人であれば、理解できることだろう。もちろん、お酒を飲む人の多くがこの言い訳をするわけではないが、他の話との整合性がとれない場合などは、覚えていないというのが、ただの言い訳で、本当は覚えている。そういうケースがあるということである。

 検事は仮定の話をしているが、この酩酊者の話をしたあとに、合意を前提とした話をしたことから、伊藤さんがこのケースではないかと疑っていた可能性が伺われる。

 筆者は彼女が本当に覚えていない部分もあるものの、証言の変遷や矛盾点があることから、覚えていてもあえて覚えていないという部分もあるものと推測している。

 

 次節では、不起訴の理由を説明する中で、検事がどんな判断をしたのかについて検証する。