江川紹子氏のバイアス 伊藤詩織山口敬之問題について
1.江川紹子氏と伊藤詩織山口敬之問題について
フリージャーナリストの江川紹子氏は、伊藤詩織さんの最初の会見から参加し、一審判決後の山口敬之氏の記者会見においても質問するなど、この問題についてかなり取材され興味をお持ちのようだ。
そして、2020年10月8日時事通信ホールにて「混迷の時代を生きる~私の取材ノートから というタイトルの特別講演会でも伊藤山口問題について言及している。
その講演会の資料の中に驚くべき内容の発言があったので、指摘、考察する。
新聞通信調査会 メディア展望総目次(2020年12月号)
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2.江川紹子氏は事実を正しく伝えていない
(1)裁判内容について
「就職活動を相談した時に、お酒を飲まされて意識不明になって凌辱された。」
① お酒を「飲まされて」はいない
伊藤山口裁判において飲酒について争点になっているが、伊藤氏側でさえも「飲まされた」との主張はしていない。したがって、この発言は虚偽の事実の摘示とみなすことができる。
どうして裁判当事者すら主張していないことを話すのだろうか?
② 意識不明になって「凌辱」された
凌辱とは、暴力で女性を犯すことであり、「お酒を飲まされて」と合わせて考えると
アルコールを利用した準強姦罪だとの指摘をしているのに等しいものと考えられる。
そして、刑事事件では不起訴、検察審査会でも不起訴相当、さらに民事訴訟でも控訴審で争っている段階でのこの発言は、山口氏の名誉を著しく傷づけるものではないだろうか。
(2)70万件誹謗中傷の嘘
伊藤詩織さんは、はすみとしこさんなど数名の名誉棄損裁判をするにあたって、評論家の荻上チキ氏に依頼してインターネット上での彼女についての投稿の調査を行った。
リサーチに協力した荻上チキさんが「被害者にとっての壁」を指摘。多くの誹謗中傷を1人の個人が集中的に受けた場合、対応はいろんな面で困難 →【伊藤詩織さんインタビュー】漫画家はすみとしこ氏らを提訴。SNSの誹謗中傷など70万件を分析|BUSINESS INSIDER https://t.co/Aqzn7k3ohg via @BIJapan
— Shoko Egawa (@amneris84) 2020年6月9日
内容を読むとわかるとおり、70万件とは投稿全体数であり、伊藤氏を支援する内容のものも含まれている。70万件の誹謗中傷があったわけではない。
江川氏はリンクタイトルだけで内容を精査せず勘違いをしたのだろうか?。そして講演会という不特定多数の人に対して虚偽の情報を流布してしまったようである。
極めていい加減で軽率な発言だと考えざるを得ない。
さらに、荻上氏の調査について調べるとより驚くべき事実が判明した。
(3)全投稿数70万件のうち批判的な内容は全体の約4%から17%
つまり70万件のうち伊藤さんにポジティブあるいは価値中立的な投稿が多くを占めていたということだ。
以上より考えると、江川氏の70万件誹謗中傷発言は内容が虚偽なだけではなく、伊藤氏にバイアスがかかった極めて不適切な発言だと考えられる。
(4)ツイッターを調べてみると、15%以上がセカンドレイプ的なツイートだった
この江川氏の発言は様々な意味で極めて不当なものである。
①「15%」とは何を根拠としているか
ツイッターに関して批判的な投稿は10.6%、さらに名誉毀損に該当する違法性の高い投稿は4.5%であったとの情報しかでてこない。
仮に間違いや勘違いだとしてもなぜ「15%」という具体的な数字がでてきたのか不明である。
まさかとは思うが、根拠のない数字を出したのではとの懸念が生じてしまう。
②「セカンドレイプ」の意味
そもそもセカンドレイプとは何を意味するかが問題となるも、江川氏の15%以上との数字と合わせると、「伊藤氏への批判」のすべてがセカンドレイプとなってしまうのではないか。
性被害者の主張が一方的に真実とされ、他方の主張がセカンドレイプとして排斥されることはあまりに偏ったものであり不当である。
私見では伊藤詩織さんは「ジャーナリスト」としてノンフィクションBlack Box
を出しており、著書により利益をあげていることからしても、性被害を含む内容の真実性等の批判については、一般人と比べ相当程度許容されなければならないものと考える。
3. 最後に
江川紹子氏は最近の傾向として、事実より感情が優先される風潮になってきたと懸念するが、江川氏こそが事実に何があったのか、それをどういうふうに判断するのではなく、「こいつ許せない」というネガティブな感情が高まって山口敬之氏を叩き潰そうとしているのではないだろうか。
つまり、江川紹子氏は伊藤山口問題に対してバイアスがかかっており、公平な視点でみることが全くできていないのである。